03-6407-0554/9:30~16:20/定休日:日曜、月曜、第4木曜日
交通:京王井の頭線 駒場東大前 徒歩約8分
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冬でもキレイな手元で

人は人生で多くの本と出会いますが、年齢を重ねるにつれて好奇心や興味の幅が狭くなってしまうことも多いのではないでしょうか。そこで、新世代を代表する3人のゲストの本棚を見せていただきながら、彼らの本選びをヒントにして、新たな本との出会いを広げましょう。

BUNDAN 草彅洋平さんの本棚
草彅洋平さん
(BUNDAN COFFEE & BEER プロデューサー)
クリエイティブカンパニーの株式会社東京ピストルの代表取締役社長として、編集を軸にデザインディレクション、プロモーション、コンサルティング等幅広い業務をこなす。「BUNDAN COFFEE & BEER」(2012)、代々木上原のグラノーラ専門店「GANORI」(2013)のプロデュースや、数多くの書籍の編集と著書を手がける。

BUNDAN COFFEE & BEER
〒153-0041 東京都目黒区駒場4-3-55(日本近代文学館内)

本棚は知的好奇心のリンク
僕が本格的に本を買いはじめたのは大学生になってから。19、20歳くらいのときです。はじめは純文学から入って、歴史や思想、現代史など他のジャンルに興味の幅がひろがっていきました。とにかく自分がいいな、好きだなと思う本を素直に読めばいいのではないでしょうか。すると、一冊の本から別の本につながっていく「リンク」が生まれます。BUNDANの本棚はまさしく僕の興味のリンクの集まりであり、僕の文学世界がかたちになっている場所。ジャンルも純文学、女流文学、現代史、サブカル、マンガ、ゲーム、パチンコ、タモリ、ネコ、食べ物まで、一見すると無秩序に見えますが、僕の中ではちゃんとつながっています。

「知らないこと」に敏感であること
会話の中で自分の知らないことや本の話題になったとき、もしそれを知っていればさらに会話を広げることができますが、知らない場合はそこで会話が終わってしまいます。だから僕は「知らないこと」への恐怖心が人一倍強いのかもしれません。人から薦められた本は必ず読むこと、そして「知らないこと」に敏感であることを心がけています。逆に、そうやってどんどん本を読んで自分なりのリンクができれば、自分が好きな本が分かってくるし、「知らないこと」への怯えや誤解もなくなっていくのではないでしょうか。


作家60人と彼らの仕事場、原稿に向かう姿の写真、友人作家から贈られたメッセージで構成されている本。知っている作家さんを見つけてそのページから読んでみるのがオススメです。

作家56人の仕事場や日常の生活を写した写真集。仕事場だけでなく、愛用の道具類や、仕事場の周辺の風景など写真も豊富で、彼らの人となりが伝わってきます。

パリの女流作家マドレーヌ・シャプサルと、ジョルジュ・バタイユ、アンドレ・ブルトン、レヴィ=ストロースなど20世紀文学を代表する作家13人の対談集。歴史的名著がどのようにして生まれたのかが分かります。

プルーストが『失われた時を求めて』を書き上げたコルク張りの部屋、若きヘミングウェイが原稿を書いたパリのカフェ、ゲーテが『ファウスト』を書いた書斎など、文学好きにはたまらないエピソードが満載です。


VASILY 金山裕樹さんの本棚
金山裕樹さん
(株式会社VASILY代表取締役社長)
ミュージシャンとして活躍後、2005年にYahoo!JAPANに入社。ライフスタイルメディアの立ち上げ後、2008年に株式会社VASILYを設立。「iQON」は世界で唯一、AppleとGoogle両社からベストアプリを獲得したファッションアプリとして200万人以上のユーザーがいる。
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「BOOKSCAN」などの電子書籍化サービスを活用。いつでもどこでも読める「デジタル本棚」
ノンフィクションかSFか
僕の本選びの基準は二つ。ノンフィクションかSFか、この二つのジャンルしか読みません。ノンフィクションは海外の著者のものが多くて、最新の事例か、歴史的名著か、のどちらか。現実的な性格なので、SFで夢物語に浸るというよりも、むしろ現実の延長線上にあるもの、未来を予言させるような本が好きです。本を探す際の情報源はamazonや書評ブログなど、いいなと思った本は迷わず購入します。読むときはKindleで、いつでもどこでも読めるように、内容を同期させて自宅のあちこちに4台置いています。Kindle版がない本は「BOOKSCAN」というサービスを使って全てデータ化します。常に何冊か平行して読んでいますが、パラパラと全体を見て面白くないなと思ったものは読みません。

本は最高の栄養
体に食物という栄養が必要なように、心にも情報という栄養が必要だと思います。その中でもなるべく良質なものを吸収したほうがいい。そういう意味で、本は時間をかけてつくられて、時間を超えて残っている最高の栄養なのではないでしょうか。僕にとってその情報が良質かどうかの基準は、自分の人生や行動、考え方を変えるほどの影響を与えてくれるかかどうか。ネット社会で読書をしなくなった人が増えたのかもしれませんが、ネットやテレビだけでなく、本という良質な栄養を吸収することも大事だと思います。


アウシュヴィッツに収容されたユダヤ人精神科医の実話を元にした物語。人はなぜ生きるのか、この世の理不尽さに立ち向かう強さなど、26歳の僕が第二思春期のときに読んだ、自分の原点になっている本です。

コンピュータが人間の知性を超える特異点「シンギュラリティ」について書かれた、SFと未来予測のはざまにあるような本です。著者のレイ・カーツワイルは未来学者でもあり、かれの言動には注目しています。

文明はすごい速さで進歩していますが、人間の体は20万年前からそれほど進化していない。ライフスタイルを野生に戻そうという本。『私たちは今でも進化しているのか?』(マーリーン・ズック、文藝春秋、2015)と対比して読むのがオススメです。

Googleの経営陣が書いた仕事のやり方とマネジメントの本。たとえば「オフィスはギュウギュウにした方がいい」、「採用判断は面接から48時間以内にする」など、ビジネス書として社内でも参考にしています。


写真家 石川直樹さんの本棚さん
石川直樹さん(写真家)
1977年東京生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。人類学、民俗学などをベースに移動や旅をテーマに作品を発表し続けている。土門拳賞、開高健ノンフィクション賞など受賞歴多数。最近では、ヒマラヤの8000m峰に焦点をあてた写真集シリーズを4冊連続刊行。
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旅の本や写真集だけでなく、小説や思想書も。山にも本を持っていくそう
本との出会いは「一期一会」
子供の時から本をよく読んでいました。文学全集や伝記もの、『ロビンソン・クルーソー』や『トム・ソーヤの冒険』、『十五少年漂流記』、『不思議の国のアリス』など冒険ものが好きでした。大人になって旅をするようになってからも、本はいつも読んでいます。ジャンルをしぼって読むということはなく、新書も読めば小説も読むし、ノンフィクションや思想書も。本に関しては雑食ですね。本は「出会い」だと思っていて、いいなと思ったら買います。出会った時に買わないと後から手に入らなくなることも多いですから。

世界第二位の高峰・K2で読んだ本
たとえ荷物になるのが分かっていても、山には本を持って行きます。テント生活では暇な時間が多いので、活字がどうしても恋しくなるんです。いまは電子書籍と紙の本は半々くらい。先日のK2遠征では、Kindle版の太宰治全集をダウンロードして、『K2に憑かれた男たち』(本田靖春)や『K2 非情の山』(ロバート・H・ベーツ)、登山家のラインホルト・メスナーの本などを持って行きました。軽い文庫本を持って行くことが当然多くなりますし、読み終わったページを破って焚火の焚き付けにしたり、ティッシュ代わりにすることもありますね(笑)。


猪谷六合雄さんは僕が最も尊敬する人の一人で、日本で初めてスキーを自作して滑った方でもあります。身の回りにある材料で生活に必要なものを何でもつくるDIYの塊のような人で、彼のような創造的な生き方に憧れます。猪谷さん本人が書いた『雪に生きる』もオススメです。

思想家であり哲学者でもあったベンヤミンが、医師の監督の下、薬物によって人間がどのように変わるかを自分の体で実験した記録です。山に登っている時も一種の陶酔状態になるのですが、人間の内面がむき出しになる状況、無意識や陶酔のメカニズムに興味があります。

秋野亥左牟さんが実際にインディアン居留地を訪ねて、インディアンの見たインディアンの世界を描いた絵本。「おれは歌だ」というのは比喩ではなく、彼らの現実世界の捉え方そのものなんですね。金関寿夫さんの翻訳もすばらしく、彼の他の訳本もオススメです。

読売新聞社会部出身のノンフィクション作家、本田靖春さんの自伝であり遺作。登山家の小西政継さんの伝記をきっかけに彼の本を読むようになりました。世の中の何が本物で何が偽物かを知っている方だと思っていますし、もっと知られていい人だと思います。Kindle版で全作品集が出たので、そちらもオススメです。
